inahachiの書評

日々読んだ書籍の短評となります

「人類学者は異文化をどう体験したか」桑山敬己

「人類学者は異文化をどう体験したか」桑山敬己 2021年ミネルヴァ書房

文化人類学を大学において専攻した方々を桑山氏が集めて、文化人類学に関してのエッセイをまとめた本。16の筆者による16のエッセイの為、主軸となるテーマは特に無いので、気になりそうな項目を読むのみは適しています。

私は、「そもそも現代において文化人類学は存在意義があるのか?」という疑問を持っていたのですが、このエッセイを読んだ中ではやはり存在意義は無さそうです。

例えば、日本人がアリゾナ先住民のヤキ族のことに関して書いた論文は誰が読むの?といった感じ。

また、博士課程に進んでいる学者様のほとんどの文脈に、「異文化を完全に理化することは出来ない」といった表現があり驚きました。人間は親兄弟はおろか双子であっても、同じ脳内の状態にはならないので完全に理解することは出来ません。それを海外文化だからといった狭い視野から入って数年掛りで体感するとは、全くの時間の無駄に気づいていない。やはり、文科系のみの偏った学問の限界が見えてきます。サイエンスを理系と文系に分けてしまう日本の教養幅の狭さは学問の飛躍を阻害しているのでしょう。